障害年金における社会的治癒

文責:所長 弁護士・社会保険労務士 白方太郎

最終更新日:2024年09月02日

1 社会的治癒とは何か

 障害年金の申請で、障害の原因となった病気やケガの症状が一旦軽くなり、ある程度の期間社会復帰していたと認められる場合には、その期間の前後で別傷病として取り扱い、その期間の後に受診した日を初診日とする場合があります。

 このような考え方を「社会的治癒」といいます。

 社会的治癒は、傷病が医学的に治癒したかどうかではなく、通院や服薬をしていたか、就労していたか等の要素をもとに、通常の日常生活や社会生活を営んでいたかどうかによって判断されます。

 期間の長さが重要な要素であり、おおむね5年以上、通常の日常生活や社会生活を営んでいた場合に社会的治癒が認められる傾向にあります。

 また、通院や服薬をしていても、経過観察や予防的治療である場合には、社会的治癒が認められます。

2 社会的治癒の効果

 社会的治癒が認められると、社会的治癒の前後で別傷病として扱われることになります。

 したがって、社会的治癒が認められた場合には、社会的治癒後に初めて当該傷病で医療機関の診療を受けた日が初診日となり、原則として初診日から1年半後の日が障害認定日となります。

 そのため、社会的治癒前の傷病の初診日において納付要件を満たさない場合や、厚生年金に加入しておらず障害基礎年金しか請求できない場合、障害認定日時点において医師の診察を受けておらず認定日請求ができない場合であっても、社会的治癒後の初診日において納付要件を満たしていれば障害年金を請求することができ、厚生年金に加入していれば障害厚生年金を請求することができ、社会的治癒後の傷病の障害認定日において医師の診察を受けていれば当該認定日に遡って障害年金の支給を請求することができることになります。

 また、社会的治癒前の初診日のカルテが残っておらず、初診日の証明ができない場合に、社会的治癒が認められることにより、初診日の証明が可能となる場合があります。

 このように社会的治癒が認められることによって、障害年金を受給できない人が受給できるようになったり、受給額が増えたりすることがあります。

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