障害年金が支給停止になるケース

文責:所長 弁護士・社会保険労務士 白方太郎

最終更新日:2024年07月22日

1 障害年金の支給停止

 そもそも年金なのに受給が止まるのか、というところからご存じない方もいるかもしれませんが、障害年金は、65歳から受給開始となる老齢年金と異なり、大多数は有期認定とされ、期間経過後は更新の手続きが必要となります。

 この更新の審査の際に今後の障害年金について支給停止となる場合があります。

2 支給停止となるケース

⑴ 症状が改善した場合

 基本的には、症状が改善した場合がまず考えられます。

 病状が悪化する進行性の病気等であればあまりないかと思いますが、症状に波があり、改善する可能性があると考えられている傷病もあります。

 分かりやすい例は精神疾患で、障害認定基準自体にも「統合失調症は、…罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり」、や「気分(感情)障害は、本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである。」等と記載されており、更新時期に症状が改善していると判断されれば、障害年金受給が認められる状態より改善したとして、支給停止となる場合があります。

 

⑵ 就労状況等の変化を捉えて支給停止と判断される場合

 また、上記と大枠としては同じともいえますが、就労状況等の変化を捉えて支給停止と判断される可能性もあります。

 例えば、障害年金2級の受給が想定されているのは、障害認定基準上は、「必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のもの」等とされています。

 実務上、就労している方は絶対に2級と認定されない、というわけではありませんが、障害年金の基準が日常生活や労働への影響の程度を基準として織り込んでいる以上、就労状況は支給停止されるか否かに影響を与える可能性があります。

 分かりやすい例としては、障害年金申請の時点では無職ないし休職中だったが、更新時には就労を再開しているケースが挙げられます。

 

⑶ 20歳前障害基礎年金における所得制限に該当する場合

 上記2つとは異なるケースとして、20歳前障害基礎年金における所得制限に該当した場合が挙げられます。

 障害年金の受給は、老齢年金の場合と同じく、基本的には保険料を納付していることを前提要件としています。

 納付状況は初診日を基準に判断することになりますが、初診日が20歳前の場合、通常は(10代で社会保険に加入しているような一部の例外を除き)まだ保険料納付が始まっていません。

 言い換えれば、20歳前障害基礎年金については、保険料を一切納付していない場合であっても年金の受給が認められることになります。

 このこととのバランスから、障害年金の受給が認められる程度にある場合でも、一定以上の所得を得ている場合には支給停止されます。

 具体的には、前年の所得が472万1000円を超えると全額が支給停止となります。

 また、前年の所得が370万4000円を超えると1/2が支給停止となります。

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