障害年金の時効
1 障害年金の時効
障害年金の受給ができる状況にあるのに、受給の手続きをしないまま一定期間を経過すると、時効が成立し、本来受け取ることができた障害年金を受給できない、という状況になってしまうことがあります。
障害基礎年金については国民年金法102条1項で、障害厚生年金については厚生年金法92条1項で、それぞれ権利の発生から5年で時効消滅する旨定められています。
2 時効による障害年金の消滅
障害年金はまず障害認定日の翌月分から受給でき、その後は支払期月が到来するごとにその期月の支払うものとされる分について時効がスタートすることになります。
その結果、障害認定日から5年を経過すると、過去の障害年金受給分が支払期日から5年を経過する都度、順次時効によって消滅し、受け取ることができなくなります。
厳密には消滅時効の「援用」という意思表示が必要となりますが、障害年金認定の際、時効にかかっている分については年金証書上、「時効消滅によりお支払いできません」と記載され、これをもって時効援用の意思表示がされているものと捉えることができますので、5年以上前のものは原則受給できなくなっていきます。
3 時効消滅の例外
以上のとおり、消滅時効の効力は、国側の援用というプロセスが必要となります。
そして、国側の内部処理などに問題がある場合には、消滅時効の援用はせず、5年以上前の文についても支払をするという例外的な運用となっています。
具体的には、年金記録の訂正、事務処理の誤りと区分されています。
厚生労働省大臣官房年金管理審議官から日本年金機構理事長に対しての通知において、時効の取扱いについての詳細が掲載されておりますので合わせてご参照ください。
4 記録、証拠上の観点からの注意
法的、障害年金実務的には上記のとおり5年が時効とされておりますが、だからといって5年経つまで手続きをしなくてもよい、と考えてよいかは別途問題となります。
障害年金の申請の際に、初診日の特定ができず受給が難しい、という場合は少なくありません。
例えば過去病院を何回か転院し、転院の際に紹介状等はもらっていなかったので、過去の通院経過はわからず、最初に通院した病院はすでに閉院してしまい記録が取れない、といったケースです。
病院がなくなったり、病院の方で一定期間経過したことでカルテを処分されたりしてしまうと、手続を進めることは難しくなっていきます。
時効とは別に、障害年金の申請をお考えの方は、早めに準備を進めた方がよいかと思います。